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広島高等裁判所 昭和30年(う)127号 判決 1955年6月04日

主文

本件控訴を棄却する。

理由

弁護人本間大吉の控訴の趣意は記録編綴の控訟趣意書記載のとおりであるから、ここにこれを引用する。

これに対する当裁判所の判断は次のとおりである。

控訴趣意第一点(事実誤認)について

論旨は、原判決が被告人を覚せい剤取締法第四一条第四項の常習者と認定したのは事実の誤認があるというにある。

しかし反覆して覚せい剤取締法第四一条第四項に違反する行為をする習癖のあるものは同条第四項の常習者に当るものと解すべく、そして右第四一条第一項の違反行為とは、所論のようにこれを各号別に観察し各号毎にその常習犯としての成立を論定すべきものではなく、右各号はこれを包括的に観察すべきものであるからその一の違反行為が譲渡又は譲受であり、他が所持であつたとしてもこれらの諸行為を包括して前記第四一条第四項の常習と認定するに何等の妨げはないのである。そして本件は原判決挙示の証拠、即ち被告人は原判示のように同法違反に関する犯歴を有しながら引続き本件犯行を敢行した事跡に徴するも、その常習性を認定するに難くないところであつて、なお記録を調査するも右の認定に誤があるとは認められない。論旨は理由がない。

同第二点(量刑不当)について

本件覚せい剤取締法第四一条第四項の常習犯と認定されているのに比較的科刑が軽いと認められるのは、原審において被告人に対する別件(昭和二九年一二月二五日原審裁判所において懲役一年を言渡され目下当裁判所に控訴中の被告人に対する同法違反被告事件)における科刑の結果をも勘案して量刑したものと推察される。本件は所論の諸事情を参酌するも、原判決の科刑が不当に重いとは到底思料されない。論旨は理由がない。

よつて、刑事訴訟法第三九六条に従い主文のとおり判決する。

(裁判長判事 尾坂貞治 判事 松本冬樹 池田章)

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